「リリカちゃん、17歳のお誕生日おめでとう」

時が止まったかと思った。ザーッという雨音が消え失せる。

「へっ?」

自分の口から情けない声が漏れた。

笑おうとしても顔が強張ってうまくいかない。

胸の奥底から沸き上がってくる感情が目頭を熱くさせる。

「今日、お誕生日だったんだね。ごめんね、知らなくて」

そういえば今日が誕生日だった。そんなことすらすっかりと忘れていた。

最後にこうやって誕生日のお祝いの言葉をかけてもらったのはいつだろう。

小学生の時、引っ越す前祖父母がかけてくれた言葉が最後だ。

それからもう何年もあたしは誰からも祝われることのない誕生日というものを考えることはなくなった。

誕生日プレゼントとか、ローソクが年の数だけ立ったケーキとか、ハッピーバースデイの歌とか、お祝いの言葉とか、そんなのもらったことがない。

当たり前の幸せをあたしはもらえなかった。

『可哀想な子』なんかじゃない。

自分自身をそう奮い立たせていたけど、やっぱりあたしは可哀想な子だ。

もうその事実から目を反らすことはできない。

反らしていたってこの現実は変わらない。