また逢う日まで、さよならは言わないで。




その後、気づいたらお通夜が行われて、気づいたら葬式が行われて。



ばたばたと、お父さんがいた痕跡が消されていくのがわかった。



その間も、私は涙一粒流さなかった。



お父さんが亡くなった理由は、交通事故だった。


信号無視した乗用車に運悪くひかれてしまったんだとか。



「來花?」



お父さんが亡くなった49日が終わったときだった。



お母さんが心配そうに私の顔を覗き込んでくるのがわかった。


私はもう小学3年生になっていた。



「何?」


「……大丈夫?」



大丈夫って、私はいつも通りだけど。



「大丈夫だけど、何?」


「……あんたそういえば、お父さん亡くなってから泣いてないわね」


「泣かなきゃいけないの?」


「……いや、そういうわけではないんだけど」



お母さんは困った顔をする。



悲しいことがあったら泣くなんて当然の道理のようにみんなはいうけれど、私は泣けなかった。



理由は自分でもわからなかった。


最初は、実感したくないから泣かないんだと思ってた。


だけど、多分違う。



「部屋に戻る」



私はそう、お母さんに行って、部屋にこもった。



そのあと、私の部屋をノックする音が聞こえる。


振り返ると、お母さんが1通の手紙のようなものを持って立っていた。



「來花、あなたにこれ。小学3年生になったんだから、文字だいぶ読めるようになってるでしょ?」



そういって、私に空色の封筒を渡す。



差出人は、お父さんだった。


懐かしい文字で、『來花へ』と書いてある。



「……なんで?」



お父さんは天国にいるんじゃないの?



「もし、自分たちに何かあったらってときのために、毎年私たちはあなたたちにあてた手紙を書いてたの。まさか、渡す日がくるなんてね……」



そういって、お母さんは静かに私の部屋を出ていった。



手が震えていたのがわかった。



私は恐る恐る、その手紙の封を切った。