――――あの時はたしか、こんな寒い日だった。
小学2年生だったあの頃。
お父さんっこだった私は、今日はお父さんが学校へ迎えに来てくれると言っていたから、お父さんが迎えに来るまで学校の教室でおとなしく待っていた。
だけど、いつまでたってもお父さんは迎えに来てはくれなくて。
日が短い冬の日だから、もうあたりは真っ暗になってしまって。
担任の先生が心配して、家に電話をしてくれようとした時だった。
『お父さん迎えに来たよ』
そんな言葉を待っていたのに。
「來花ちゃん。今すぐ先生と病院に行こうか」
私は訳が分からず、先生に連れて行かれるまま、病院に行き、一番に目に入ってきたのは、泣きわめいているお母さんと姉ちゃんだった。
「先生、どういうこと?」
なんだか怖くなって隣にいた先生のスーツの裾を強く握った。
先生は何も言ってくれなかった。
先生に気づいた私の母親が、先生に深々と一礼し、先生も同じようにして私の母親に一礼した。
「じゃあ、來花ちゃん。学校でね」
先生はそれだけ言い残して、私に背中を向けた。
「來花」
先生の変わりにお母さんが教えてくれるのだろうか。
お母さんは私の肩に手を置き、しゃがみ込んだ。
「なんで泣いてるの?」
私はそう言って、涙を流し続けるお母さんの涙をぬぐった。
「驚かないでっていうのは無理かもしれないけど、しっかり聞いて頂戴」
だけど、お母さんの涙は、ぬぐってもぬぐってもあふれてくる。
何がお母さんにこんなに涙をながさせるの?
お父さんはどこなの?
私、お父さんをずっと待ってたのに。
「お父さんね……天国に行っちゃった」
そういって、無理にでも笑おうとするお母さん。
「天国?」
小学2年。
天国がどういうところか私はもう知っていた。
「お父さん……死んじゃったの?」
私のその言葉に、さらにお母さんの涙は止まらなくなった。
ああ、そうか。お父さんが死んじゃったから、皆泣いてるのか。
だから先生も黙って私をここに連れてきたのか。
自分の口から言うのはあまりにも重たい事実だから。


