「あー、そのー。先に謝っとく。全部聞いちゃった。悪気はないんだ、ごめん」
來花が家に帰ろうと、俺の部屋の扉を開けた時だった。
そこには、ケントとカズヤがいて。
ケントが俺たちを見るなり、そういって、頭を軽く下げた。
カズヤはといえば、満面の笑みで俺たちを見てくる。
「あれだけ大声で言い合って、何かと思えばね……」
カズヤはそう言って、俺たちに背を向けて、1階へと降りていく。
赤面し続けるしかないこの状況がものすごく心地悪かった。
「んで。付き合ったの?どうなの?」
カズヤが去ったにもかかわらず、ケントは俺たちにさらに探りを入れてこようとする。
「……いいの。ケントさん」
なんて返せばいいのか言葉を選んでいる間に、來花がそう強く言葉を発した。
「何が?」
「気持ち伝えられただけで、直哉の気持ち知れただけで、もういいの」
そういって、笑った彼女。
そんなことしか言わせられない、自分に腹が立った。
だけど、これ以上何を言えばいいのかわからなくて、俺は口元を強く結んだ。
ケントもなんて返せばいいのかわからないって顔してる。
質問して後悔してるな、きっと。
「じゃ、私帰るから。明日学校だし。じゃあね、直哉」
そういって、來花は、笑顔で俺に手を振り、階段を下りて行った。
俺はそんな來花に、手を振り返すことしかできなかった。
「なあ、ホクト」
「……何」
「お前、どうすんだよ」
「どうするって……」
そんなの俺が聞きたい。
「ま、悩め。ケジメつけろ。あのまま放置は地獄だぞ。……あの状況で涙流さないであんな強い言葉言えるなんてな。……すげえよ、あの子」
「俺の好きになった女だからな」
「……そうだな」
そういってから、ケントは、ゆっくりと階段を下りていく。
「……何やってんだ、俺」
そう言って、俺はそのまま床に座り込んでしまった。
俺としたことが、感情のままに雨後してしまったことへの後悔が押し寄せてきた。
いくら來花が俺のことを好きだったからって、自分の気持ちをばらすなんて。
今まで耐えてきたのが水の泡じゃねえか。
頭を抱えてしまう。
これからどうすればいいのか必死に考えるが、全くわからない。
「……おい、ホクト」
1階からカズヤが俺を呼んでいるのが聞こえる。
なんだよ、今は1人でいろいろと考えたいときなのに。
「なんだよ」
そう思いながらも一応返事をする。
「今じゃねえの?」
「何が」
「お前のアレ。俺らに隠れて作ってたやつ」
なんだよ。
気づいてたのかよ、カズヤ。
やっぱりお前には一生敵う気がしない。
さっきまで、もやもやしていたはずなのに、急に笑えてくる。
「……いつから気付いてた」
いつの間にか、階段の下にいたはずのカズヤが俺の目の前で立っている。
「お前がプログラミングしだしたときから」
「……ったく、お前には一生敵わないわ」
「それはどうも」
俺はゆっくりと立ち上がる。
カズヤと目線が一緒になる。
「……準備手伝ってくんね?」
「もちろん」
カズヤはそう言って、満足げに笑った。


