そして、俺はある画面で操作をやめた。
「……これは」
「そう、前にお前に行ったらだろ?四季をテーマにしたテーマパーク」
ディスプレイの画面には、最近作り終えた、テーマパークのPR動画が流れていた。この世界で見た綺麗で刹那なものを、あの世界の住人の人たちにも味わってもらえるようなそんなパーク。
「すご……」
來花はそう言って、キラキラした瞳でその画面をじっと見つめていた。
「そういえばさ」
ずっと聞きたかったことを聞くチャンスだ。
急に思い出した。
「やりたいこと、見つかった?」
俺の正体がばれる前、來花に鎌をかけたことを。
「ああ……」
來花は、ディスプレイから目を離し、椅子を回転させて、俺の方を見上げてくる。
不意の上目遣いに、思わずどきりとしてしまう。
表情に出すまいと、口元に力を入れた。
「見つけたよ」
そういって、來花は恥ずかしそうに、だけど、どこか自慢げにそういった。
「何?」
「ライターになろうと思って」
「ライター?……またなんで」
來花は勉強ができない、割には現代文にはいつも高得点を取っていたことは知っていた。
しかし、本人にそのことについて聞いたとき、「答えは全部本文に乗ってるからそんなに考えなくても解ける」といって別に好きだから点数が伸びている様子ではなかった。
「直哉が褒めてくれたじゃん。直哉を雪に例えたときさ。……そうやって言葉で何かを表現する仕事って素敵だなって、思ってね。だから急遽ではあるんだけど、お母さんに最近専門学校に行きたいって言ったところなんだよね」
胸が熱くなった。
來花にやりたいことがみつかれば、きっかけはどうであれ、いいと思っていた。だけどそのきっかけがまさか、自分だったことで、目頭がじんわりと熱くなったのがわかった。
「……いいじゃん」
やっとの思いでその言葉をかける。
長年押し込めていた想いがあふれ出しそうで、それを押し込めるのに俺は必死だった。
「本当は、このこと伝えたくて、直哉に会いに来たんだよね。……お礼言おうと思って」
だから、お願いだからこれ以上俺を喜ばせないでほしい。
「ありがとう。私、直哉に負けないように、頑張るよ」
もう、感情があふれてきて仕方ないんだ。
だから、許してほしい。
こんな俺を。
「……直哉?」
「悪い、抑えられそうにない」
もう止まらなかった。
止められなかった。
気づけば、俺は、椅子から來花を立ち上がらせ、來花にキスを落としていた。
そして、抱きしめていた。
それから、どれくらい時間がたっただろう。
「……直哉!?」
來花のその声で急に我に返る。
そして、自分が今してしまった大罪を実感する。
來花から俺は瞬時に離れ、彼女に背を向けた。
「……あの」
來花が気まずそうに、背後から声をかけてくるのがわかる。
「……悪い、けど。帰ってもらってもいい?」
今どういう顔をして、キミに話せばいいのかわからない。
「わかった」
來花は素直に、そう返事をして、俺の部屋を出ていく……と思った。


