また逢う日まで、さよならは言わないで。




「なんで、歩人が謝るんだよ」



だけど、カズヤはそんな俺を笑った。



「最初は俺、疑ったんだ。お前を。裏切ったんじゃないかと思って」


「そんなことするわけないだろ。だけど、もう一つ、歩人に謝っとくべきことがあるんだ」


「なんだよ」


「來花ちゃんに告白した」


「え?」


「いう予定はなかったけど、思わず、口が滑った」



カズヤは、常に余裕がある人だ。


どんなハプニングが起きても、周りがどんなに焦っていても一人冷静に対応してきた。


だから、焦ってとか、思わずというような行動自体あり得ないことだった。



「何があったんだよ。カズヤらしくない」


「本当だよな。自分でもそう思う」



カズヤはそう言って、ため息まじりに息を吐いた。



「彼女、震えたんだ。俺がホクトだって知った瞬間」


「びっくりしたんだろ」


「いや、違うと思う。來花ちゃん、本当はホクトが誰なのか本当は分かっていたんじゃないかな」


「え?」


「なんでかっていう、確実な証拠はないけど、明らかに俺の言うことを最初は信じていなかった。いくらびっくりすることとはいえ、本当にホクトが誰なのかわかっていなかったら、あんな俺を疑うような目はしない」


「だから言ったのか?」


「ああ、俺の言っていることを信じてほしくて思わず、自分の個人的な気持ちまでしゃべってた」



來花は俺のものなんかじゃない。


別にカズヤが來花に告白しようが、何をしようカズヤの勝手だ。


それをわざわざ俺に断る必要がどこにある。



「カズヤが俺に謝ることなんて何もないだろ」



ふがいない俺を助けようとした結果の出来事だ。


何を責めることができる。



「……歩人」


「俺こそ悪かった」


「え?」


「俺がホクトだって、ばれないように細心の注意払ってたつもりだったけど、意外に鋭い時があるから、もしかしたらどこかでばれていた可能性はなくはない」


「……そっか」


「だから、加納さんになにか言われたりしたらその責任はすべて俺にあるから。何ももうカズヤは謝らなくていい」


「歩人も少しは人間らしくなったな」



電話の向こうのカズヤは笑っているようだった。



「……かもな」


「安心したよ、少し。じゃ、お言葉に甘えて加納さんの対応は任せることにする。詳細が旦那様から送られてきたらまたこちらから連絡する」


「ああ、わかった」



俺は、耳からスマートフォンを外し、足を止めた。



カズヤと電話しながらも、歩き回った來花の行きそうな場所、中学時代の來花の家出コースを俺は歩きまわっていた。



そして見覚えのある背中を見つけた。


小さく河原でうずくまっていた。