また逢う日まで、さよならは言わないで。




「暇なの?」



來花の部屋を一応ノックしてから開けると、少し嫌そうな顔で俺を見てくるのは來花だった。



「こっちのほうが、ゲームはかどるんだよ」



俺はそうわざとぶっきらぼうに言いながら、定位置であるソファーに座った。


來花は俺が座ることを予想して、俺の座る位置を用意するために、ソファーの端によった。



ゲームをしたいからなんて。


通信環境がこっちのほうがいいからなんて。


そんなのただの口実だ。


來花と少しでも長く一緒にいるための口実だ。



あと一年もない残された時間。



正直、來花を手放すような覚悟なんてできていない。



手放すも何も、俺と來花ははたから見ればただの近所の人であり、他人だと言ってしまえばそれまでだ。



しかし、この気持ちが芽生えたことによってそれは、赤の他人ではなくなり、俺にとって來花は、愛しい人になってしまった。



これはまだ大人になれない俺の青い恋だと、人は笑うだろう。


それでもいいと思った。


笑われたってなにしたってかまわないと思った。


もがいてつかんだ來花とのこの時間を無駄にするわけにはいかない。



しかし、この恋は決して実ることはないだろう。



俺の自分勝手で、周りからすればとても迷惑な想いだ。



「ねえ、直哉」



來花が、ソファーに座る俺に向かって隣から声をかける。


そして、自分のスマートフォンの画面を俺に見せる。


そこにはただの犬の動画があり、「これかわいくない?」と笑顔で俺に問いかけてくる。



俺は目線だけを來花の方に向け、「そうだな」とわざと興味なさそうに返事をする。


それでも來花は、相変わらず嬉しそうで、再び自分のスマートフォンに視線を戻す。



この恋が決して実らない代わりに、來花の未来を少しだけ、照らせるような存在になりたかった。


それが、ホクトとして、來花に接触した最大の理由だった。



しかし、思わぬ裏切りによって、俺は自分の計画を方向転換せざるを得ない状態に立たされることになる。