高校3年になったとき、俺はある1つのことを決断した。
1つの賭けだといってもいいかもしれない。
【はじめまして】
俺は來花にこの時代のコミュニケーション手段である『talk』というアプリケーションを使って、メッセージを送った。
小池直哉としてではなく、直野歩人として來花にメッセージを送ったのは初めてだった。
案の定、最初は信用してもらえなかったが、立花祐樹という人物との恋愛相談をきっかけに徐々に、來花の信頼を得ていった。
來花を任せられるような人が現れてくれれば、俺はきっと、元の世界に戻る覚悟を決めることができると、そう思った。
そのためには、何でも話せるような相談役、つまり、來花にとって家族のような直哉ではなく、顔も本当の名前も知らない、見ず知らずの歩人が必要だった。
最初はうまくいってると思っていた。
歩人として、連絡を取り始めてすぐに、來花に気になる人ができたようだった。
來花の話からすると、向こうも來花に好意があるような様子だった。
來花の話を聞く分には、とても紳士的な大人な男性であった。
來花を任せることのできる人としては、申し分ない人だと思った。
実際に彼に会うまでは。


