また逢う日まで、さよならは言わないで。




時の流れは速いもので、この世界での中学生生活は終わり、高校生活を俺は送っていた。


俺は、來花とは別の高校へ行き、以前より、來花とのかかわりは少なくなったかと思いきや、逆だった。



「あー、またいる」



來花が高校から帰ってきて、部屋に入った第一声は大体この一言だ。



高校に入り、俺は來花を、來花の部屋で待っていることが多くなった。



最初はこんな、來花の部屋に入りびたる気はなかったのだが、毎食毎食夕食を、おばさんが俺の家まで誘いに来てくれるため、おばさんが誘う前に、俺のほうから行くという行動をとった結果がこれだった。



「ったく、暇なの?」


「ああ、暇」



俺の定位置化しているソファーの隣に、座ってくる來花を俺は見ようともせず、目線はスマートフォンの画面のまま答える。



正直、高校での授業も暇だった。


元の世界で習ったことばかりを繰り返す授業に、飽き飽きしていた。



「いつもさ、ケータイばっかりいじってるけど、何見てるわけ?」



そういって、來花が俺のケータイを覗き込んでくる。



「なんだ、またゲームか。よくもまあ、飽きないね」



そういって、來花は立ち上がり、着替えをもってこの部屋を出ていった。


今日は暑い。


梅雨の始まりだ。


だから、早めのシャワーを浴びにいったのだろう。



俺は、來花が階段を上がってきたときに隠した、もう一つのスマートフォンのほうを取り出した。



案の定、カズヤからメッセージと、添付ファイルが送られてきていた。


俺はそのメッセージを開く。



【今日の資料送っておく。目を通しておくように】



添付ファイルの中身は、父さんの経営する会社の資料だった。


俺は向こうの世界に帰るとき、そのまま、会社の経営者候補として名を連ねることになる。


現取締役の息子だからと言って、簡単にあとを継がせてくれるほど、甘い世界ではない。


自他ともに認める経営者でなければ、誰も俺を信用してついてきてはくれないだろう。
 


ただでさえ、俺は元の世界に戻ることを拒み、この世界にい続けているため、会社の重役からの印象はよくないことだろう。



そのため、カズヤは、この世界に来る前に、父親の側近として会社の経営を、俺の変わりに学び、こうして、毎日俺に資料を作成して送ってくれている。



俺はその資料に毎日目を通し、この世界を出るころには、会社のすべてがわかるようになっている状態で戻れるようにするのである。



俺は、添付ファイルの資料をダウンロードし、スマートフォンに情報を落とし込む。



そして、次の日1日をかけて、高校の授業中も、來花が返ってくるまでの時間も資料に目を通し、学習しているというわけである。



來花はきっと俺を、いつもゲームしているただの暇人だと思ってるだろう。


それでいい。


カズヤの言う通り、スマートフォンの2台もちは実に便利だった。