また逢う日まで、さよならは言わないで。




それから数日後、花蓮さんから、來花の彼氏と連絡先を交換して、連絡を取り始めたと連絡が来た。


どのようにして、連絡先を聞いたのかは、教えられていないが、おおよそ予想はつく。



たぶんだが、彼のバイト終わりの時間でも狙って、わざとぶつかるか何かして謝罪をしたいとかで連絡先を交換したんだと思う。


以前、花蓮さんに好きな人ができた時、それで連絡先を交換していたから。



花蓮さんと連絡先を交換したところまで行ったとしたなら、あとは時間の問題だ。
性格が男勝りなため、長年彼氏がなかなかできないと聞くが、黙っていればモテるタイプだと、來花が言っていた。



そのため、猫をかぶってしまえば、花蓮さんの誘惑に負けないものはいないと思う。


中学生なんてたぶん瞬殺だ。



その時、家のインターンフォンが鳴り、俺は、皿洗いをする手を止めて、玄関へと向かった。


誰かは大体予想はついている。



「なんだよ」



俺がドアを開ける前に、彼女は扉を開いていた。


たぶん俺が出てくるのが遅くて、玄関先に隠してある予備のキーで開けたのだろう。



「あー。振られた」



來花は俺の顔を見た瞬間に、目に涙をいっぱい貯め、俺の胸に飛び込んできた。俺は抵抗する間もなく、來花に強く抱きしめられ、なんだかとても複雑な気持ちになる。



「とりあえず落ち着けよ」



そう、優しく声をかけてみるが、來花は俺の胸で泣くばかりで、俺はその場で硬直するしかなかった。



それから5分ほど來花はそのまま泣き続け、疲れたのか、次第に來花は平常心を取り戻していき、ゆっくりと、俺の胸を離れた。



「落ち着いたか?」


「……うん、すっきりした」


「そうだろうな、これだけ泣けば」



案の定俺の服は、來花の涙でぐっしょりだ。



それに今気づいたのか、俺の濡れた服を見て、來花は目を見開く。



「あ、ごめん!」


「まあ、いいよ。とりあえず、着替えてくるから、適当にリビングに座ってて」



俺はそう言って、來花に背を向けて、自分の部屋へ向かい、素早く適当に着替えて、來花が待っているであろう、リビングへと向かった。
 


來花は、俺の服を自分の涙で濡らしたことに今反省しているのか、ソファーに座って、小さくなっていた。



「何飲む?」



俺はそのままキッチンへと向かう中で、そう背中越しに、來花に問う。



「……オレンジジュース」



來花の、少し弱っている声が聞こえた。



俺はそれに返事を返すこともなく、來花の分のオレンジジュースと、自分の分のアイスコーヒーをグラスに1つずつ入れて、來花の待っている場所へ向かう。



机の上にその2つのグラスを置き、俺はゆっくりと、來花の対面のソファーに座った。



「落ち着いたか?」



うつむいている來花に、そう、できるだけ俺は優しく声をかけた。



「……うん」



來花は小さく答える。



正直、俺は少し後悔していた。ここまで來花が落ち込むことは予想していなかった。



來花から好きになったわけでもないし、今や元カレに成り下がった彼も本気で來花を好きなわけではなさそうだった。



來花は、本気でやつのことが好きだったのか。



そうすれば、俺と花蓮さんがやったことは、あまりにも残酷だ。