また逢う日まで、さよならは言わないで。




次の日の朝、悲惨のことになっていた。


昨日は日曜日。ということは、今日は、月曜日だ。



「おい、起きろ。酔っ払い」



俺は、ソファーに寝そべっていた大人2人を、朝っぱらから叩き起こすところから始めた。



「あー、頭いてえ。わりいけど、ホクト。水もってきて」



先に起きたのは意外にもケントの方だった。


俺はあらかじめ用意してあった水をケントに渡した。



ケントはそれを一気に喉へと流し込んだ。



「あ、カズヤは酒飲んで酔っ払った次の日は何しても起きねえから。俺が適当に連れて帰るよ。お前、今日学校だろ?」


「そうだけど」


「ってことは、例の子が呼びに来るのか?」


「……まあ」



そんな、話をしているときに、家の呼び鈴が鳴った。



俺は、ケントに絶対に出てくるなと念を押して、玄関に向かった。


そして、扉を開けた。



「おはよ、迎えに来たよ」



そこには、いつもの元気な來花の姿があった。



いつもなら、この時間に用意は済んでいて、一緒に來花と家を出るのだが、昨日カズヤと遅い時間までしゃべっていたため、起きる時間も遅く、何も準備できていなかった。



「わり、今日寝坊してまだ用意できてないから先に行っててくんね?」


「えー、何してんの?いいよ、リビングとかで待ってるよ、遅刻しない程度に」


「え、いや、それないいから。本当に」



今、來花に家に入られるのはまずかった。


來花の知らない大人が1人は爆睡していて、1人は二日酔い中なのだから。



だけど、今日の來花は言うことを聞いてはくれなかった。



「寝癖をまだ直していない様子から察するに、洗濯物とか洗い物とかまだ終わってないんでしょ?そっちは私やっとくから、直哉は早く着替えてきなよ」



そういって、來花は靴を脱ごうと玄関に座り込んでしまう。



普段ならこれは大変ありがたいことなのだが、今は違う。



しかし、こうなってしまった以上、來花は納得いくまでは絶対に引き下がらないことを俺は知っていた。



「……おお、直哉。どうした友達か?」



そんな時、後ろから嫌な声が聞こえた。恐る恐る振り向くと、そこには髭を剃ったケントの姿があった。



來花は、目を見開いて、俺とケントを交互に見る。



「あ、はじめまして。直哉の叔父です」



叔父というには、若すぎる顔立ちだとは思ったが、來花はあっさりにもそれを信じた。



「あー、叔父さんがきいたんだ。なるほどね。じゃあ、私やらなくても大丈夫だね。ここで待ってるから、着替えておいでよ。早く学校に行こう」



來花はそういって、玄関に座った。



なぜ口髭を剃ったのかは分からないが、ケントの行動に俺は間一髪助けられた。



俺は、それから急いで2階に上がり素早く着替えを済ませ、玄関へと向かった。



玄関では、ケントと來花が何やら笑い声を響かせて楽しそうに話していた。



「あ、直哉。準備できた?」



來花は俺の存在に気が付くと、ゆっくりと立ち上がった。



「ああ、できたけど」


「じゃあ、行こうか」



そういって、來花は、軽くケントに頭を下げた。



なんとなく複雑な気持ちになりながら、俺はケントの前を横切り、來花の隣に並んだ。



「じゃあ、行ってきます」



來花が元気よく、ケントに手を振る。



「おお、いってらっしゃい。気をつけてな」



ケントはそんな來花に負けないくらいに元気に俺らに手を振った。



今朝の起きた時の顔とは大違いだ。



俺らは、そんなケントに背を向け、玄関の扉を閉め、そして、いつも通り、いつもの通学道を2人で歩き出した。



「楽しい人だね。しかもイケメンだし」



歩き出したとき、來花が俺に笑顔でそう言った。



誰にでも愛想のいいケント。


しかも、高身長に、すらっとした鼻、切れ長の目を持ち合わせた容姿をしているため、元の世界ではすごいモテてたって、あのカズヤが言っていた。



この世界でも、女子からほっとかれることがないのは、間違いないだろう。



あの一瞬の会話にして、來花はもうケントの虜になってしまった様子だ。



「叔父さん、彼女いるよ」



俺は無意識にそういっていた。



むかついたんだ。


ほかの男のことを楽しそうに話している來花に。



「えー。そうなの?ちょっとショック」



來花はあっさり引き下がった。



それに、少し安心する俺。



そして、金輪際、二人を会わせないよう気を付けようとこの日誓った。