最初は2人来ることが嫌で嫌でたまらなかった。
だけどいざ来てくれたら来てくれたで、正直嬉しかった。
俺を昔から知る人がそばに入れくれるというのは頼もしくて、温かいものだ。
その日は、1年ぶりにあったというのもあって、昔話に花が咲き、いつの間にか、ケントが近くのコンビニでお酒を買ってきた。
この世界では20歳から飲酒可能らしいが、向こうの世界では18歳から飲酒が可能だ。
口髭が生えているばかりに年齢確認はされなかったのだろう。
年齢確認されたところで、この二人の身分証明書の年齢は父さんが言っていたように20代になっているから問題はないのだと思うけれど。
お酒の強いカズヤと飲んだばかりに、ケントは早々につぶれてしまった。
せっかく、カズヤが取ってくれた宿はキャンセルにし、二人は今日俺のこの家に泊まることになった。
「ホクトはもう、何歳になった?」
ケントのいびきがリビングに響き渡る中、カズヤが、ウィスキーをロックグラスの中の氷でゆっくり溶かしながら、俺にそう尋ねてきた。
「今年で13」
「そうか。大きくなったな」
そう、ゆっくりいうカズヤは少し酔っているようだ。
2人がお酒を飲んでいるのを見るのは初めてだった。
だから、今この目の前にいるカズヤは、俺にとってみれば新鮮で、もう少し見ていたかった。
俺は、カズヤが、ゆっくりグラスを揺らしてたロックグラスの中に、また少しウィスキーを継ぎ足した。
「ホクトに初めて会ったとき、生意気なガキだと思った」
カズヤは俺がウィスキーを継ぎ足したことには、気づいていないようだった。
「俺とケントが10歳でホクトが5歳だ。体の大きさが全然違って、少しは怖がっても不思議じゃないのに、ホクト。お前は、最初から俺たちにビビりもせず、わがままだった」
カズヤはそういって、1口ウィスキーを飲んで、笑った。
「あれを取ってこいだの、これをしろだの、本当にわがままだった。だけど、俺たちがお前に敬語を使うことだけは決して許さなかった。自分でも、将来ご主人になる人に向かって、お前っていうのもどうかと思うけど、それでもいいって、ホクト言ったよな」
「ああ」
「それはなんでだ?」
「気を使われるのは嫌だったんだ」
俺は、さらにカズヤのグラスにウィスキーを注いだ。それを、カズヤは満足げに見ていた。
「友達になりたかった。お前らと」
「……そっか」
「カズヤは嫌じゃなかったのか?」
「なにが?」
「お前は、特別に優秀だったと父さんが言ってた。自分より一回りも年下である俺の面倒見るってことが、エリートのお前にとっては暇だったんじゃないかと思って」
俺たちが生まれた世界では、10歳になった子ども全員に、テストが行われる。そして、子どもはそこでランク付けされ、トップレベルの子どもには、財閥内でもトップレベルの価値を誇る直野家等へ遣えながら経済の勉強をすることや、将来の政界の中心人物になるような教育がされるのである。
成績が良かったケントとカズヤがそれでうちに来たというわけだ。
「最初は正直少し思ってたよ。だけど、今はこの選択をしたことを後悔していない。旦那様も奥様も優しいし、直野家の運営する会社の経営方式には学ぶことが沢山ある。日々刺激を受けていたよ」
「ならよかった」
「それに、俺は将来のお前に期待してるんだ」
カズヤが俺を見て笑っているのがわかった。
その真っすぐなカズヤの目に俺は一瞬、金縛りにあったかのように動けなくなった。
「お前は、旦那様と同じような考え方をしている。論理的な考え方だ。ちゃんと頭を使って動いている。……俺はお前について行くよ」
その言葉がどれほど、頼もしいか、きっと、カズヤはわかっていない。
向こうの世界でカズヤは指折りの逸材だ。どの企業も、どの政界もこの逸材を欲しがっている。
そんな人がまだ13歳のこの俺について行くといった。
「今の言葉、忘れんなよ」
「……俺は酔っても記憶は飛ばさねえから安心しろ。あ、ケントはすぐに飛ばすから気をつけろ」
そういって、また、顔に笑みを浮かべたカズヤ。
俺はそんなカズヤのグラスに、再びウィスキーを注いだ。


