また逢う日まで、さよならは言わないで。




2人は大人だ。


俺に嫌みの1つや二つ言ったって罰は当たりやしない。


2人にだって生活というものがあって、働いていない間に友人たちと恋人と遊びたいだろうに、この世界に連れてこられてしまって、あと数年は、この世界にいないといけない羽目になってしまった。



「悪いと思ってる」



気づいたら、小さな声で俺はそう2人に言って、少しばかり頭を下げていた。



さっきまで笑っていた二人が、俺のその行動に笑いを止め、俺をじっと見てきているのがわかった。



「どどど、どうしたんだよ、ホクトが俺らに謝るなんて」



ケントが再び慌てだす。


カズヤは相変わらず、そんな俺をじっと見ていた。



「二人のこれまでの生活犠牲にしてまで、俺のわがまま付き合ってもらって。本当に悪いことしてるってのはわかってる」



ずっと、二人がここに来てから心の奥底がもやもやしていた。


どんな言葉でこの感情を表せばいいのかわからなかった。


早く大人になって、何でも自分で判断して自分で責任をとれる人になりたいと思っていた。


だけどそれは、逆に恐怖でもあった。



本当は、さっさと來花に告白して、つれさって、誰にも邪魔されない世界にいって、2人でずっと幸せに暮らしていきたいんだ。



だけど、人間というものは非常に欲深い生き物で、來花一択になってしまえば、周りをどうしても巻き込んでしまう。



子どもの俺が來花を俺が選んでしまったから、俺が責任を取るのではなく、父さんが、俺が今は背負えない分の責任を背負い込んで、こうして2人が犠牲となって俺の目の前にいる。


それがどんなに、みじめで情けないか。知らず知らずのうちに俺は歯を食いしばっていた。



「旦那さまからの伝言だ」



そんな俺に、カズヤが静かに言葉をかけた。



「後悔がないように好きにやれ、だって」



顔を俺があげた時、すこしカズヤが笑っていた気がした。



「俺らに申し訳なく思う必要はない。お前がわがままいわなきゃ、俺らが一生こんな贅沢なパスポートでこの世界に来ることなんてできなかった」



さすがだ。


そう思った。


俺はやっぱり、カズヤには一生敵わない気がする。



「最初お前ら2人に言った言葉。悪かった」



俺はもう一度そういって、軽く頭を下げた。



「俺は、ホクトの人間らしいところ見られて嬉しかったけどな」



俺の言葉に、ケントはそう言って笑った。



「ホクトに渡すものがあって。このスマートフォン。もっておけ」



カズヤが、素早く、カバンの中から、2台のスマートフォンを取り出し、机の上に置いた。



「これからこの世界で暮らすのに、俺たちには基本的に2台のスマートフォンが必要になってくる。旦那様も奥様も2台持っていたはずだ。俺らももうすでに二台持っている」



カズヤは、カバンの中から、自分のものと思われるスマートフォンを2台取り出し、テーブルの上に置いた。



「理由は?」


「この世界の人と連絡を取る用と、俺たちと連絡取る用だ。俺たちはこの世界の名前と、前の世界の名前と2つの名前を持ってるだろ?しかも、俺たちとの会話の内容がこの世界の人に見られるのもまずい。だから、分けておいたほうが何かと便利だと思う」


「わかった」



俺は、テーブルの家においてあった、2台のスマートフォンを受け取った。



「じゃ、俺たちはもう行くわ」


「え、もう!?」



早く家を出ようとするカズヤとは裏腹に、もう少しここにいたいというように、ソファーに深く腰を掛けていたケント。


そんな2人の掛け合いが懐かしくて、俺は思わず笑ってしまった。



「相変わらずだな」



俺のそんな様子を見て、なぜかケントも笑いだす。



「そういうホクトだって生意気なところかわってねえよ。3年後には俺らがお前に遣えるなんて、いまじゃ想像できないけどな」


「俺だって、二人が俺に遣えてるなって想像できねえよ。カズヤ絶対俺に口答えしそうだし」


「内容によるな」



いつの間にか、カズヤもソファーに深く腰かけていた。


どうやら、今日はもう少しここにいてくれるようだ。