「広瀬。今日時間ある?」

根岸くんは、私をじっと見て話しかけてきた。

「え?なんで?」

私は逆に根岸くんに聞いた。
だって、いつも話したら自分の教室に戻るのに、どうしたんだろう。

「一緒にCDショップ行かない?」

根岸くんは頬を赤く染めて、私に聞いてきた。

「いいよ。じゃあ、行こう。咲はどうする?」

私は素直に根岸くんに返事をした。

「どうせ。伊勢宗介の歌でしょう。私、興味ないから。二人で行ってきな」

咲は呆れた様子で返事をして、私たちを見ていた。

「じゃあ、放課後行こうか」

根岸くんは照れた様子で私を見て、話しかけてきた。

「うん。終わったら、連絡するよ」

私は返事をして、放課後どこに行くか想像していた。

だが、私の楽しみの裏に根岸くんと西原がバチバチと火花を飛ばしていた。

        *

僕は広瀬の教室から出て、ドア近くに西原がいた。

廊下の窓に寄りかかって、僕を眺めていた。

「なに?」

僕は西原に聞く。

すると、西原は睨んだ口調で僕に言ってくる。

「今日、千花とどこいくつもりだ?」

西原は元ヤンキーだからか睨んでいるだけなのに、怖い。

僕は少し一歩下がって怯えたが、怯まない。
ここで怯んだら、僕は西原に勝てない。

「…西原には関係ない」

僕は西原から目を逸らして、声を発する。

「…千花は俺のもんだ」

西原は僕に一歩ずつ歩みよってきた。

「広瀬とは付き合ってないだろう」

僕は反抗的に否定した。
だって、付き合ってないのに。
俺のモノとか。

好きだからって、そんな言い方は。