「すき」


蚊の鳴くような声だったけど、俺の耳にはちゃんと届いた。


誰がなんと言おうと、しっかりはっきり聞こえた。

星野さん、さっき「すき」って………。


なにが………?

ホラーゲーム?
それとも…お……れ……?


バッチーン

「いてぇ…」


自分の右手で、自分の頬に、容赦なく平手打ちをお見舞いすれば、ヒリヒリと痛みを感じる。

手のひらだってジンジンしている。

ってことは、これは現実だ。

そもそも俺はすっげー元気で。

熱に浮かされて夢を見ている、なんてことあるはずがない。


それに、さっきから心臓がドッキンドッキン、バックンバックン言っている。

あ、でも「ちょっと待ってくれ」と。

独り言をこぼして、右手をそっと左胸に当てる。

…よかった。今にも飛び出そうな心臓だけど、飛び出してはいない。

口からホッとため息が出る。