きみのへたっぴな溺愛

「今、お茶しかなくて。…どうぞ」

「ありがとう…。いただきます」


遥斗くんからグラスを受け取って、口に運ぶ。

ソファーが軋む音がした。

私の胸もドキンと鳴る。


「あ、遥斗くん…今日はなにしてたの?」

「…ゲーム」


数センチ隣に座る彼がポツリとこぼす。

心臓の音を誤魔化すように「そうなんだ!」と明るい声を出した。


「なんのゲーム?」

「ホラーゲームだよ。あ、星野さんもやってみる?」

「え?」

「どう?」

「う、うん…」


頷けば、笑った遥斗くんがあれよあれよという間にゲームを立ち上げて。

大きなテレビに不気味な映像と音楽が流れ始める。


「これ、どのくらい怖いの…?」

「うーん。どうだろう…普通?ゾンビから逃げる、脱出ゲームみたいなやつ」

「そっか。面白そう」

「うん。ゾンビはちょっと怖いかもしれないけど」


遥斗くんは楽しそうに笑って「気をつけて」の言葉とともにコントローラーを渡してくる。

「ありがとう」と受け取って、基本動作を教えてもらえば、画面の中でアバターの男の人が、音のない暗闇を歩き出した。