「じゃあ俺、自転車止めてから行くわ」

「あっ、うん。本当にありがとう」

「こっちこそ。星野さんと登校できてラッキーだった。また教室で」


にこっと微笑まれて、もうダメだと思った。

力を振り絞って大きく頷く。


…遥斗くんと登校しちゃった。

下駄箱で上履きに履き替え、教室のある4階を目指す。

階段の途中でチャイムが鳴り響き、あっ!と思う。

多分、予鈴。
周囲には他にもちらほらと生徒がいる。

ふわふわとした足取りでなんとか1年C組にたどりついた。

反射的に黒板の上にある時計を見れば、8時36分くらいで、間に合ったことにホッとする。

遥斗くんもすぐに顔を出すだろう。


窓際から2列目、1番後ろ。

その自分の席に腰掛ければ、一気に力が抜けた気がした。

嬉しさと緊張で感情が大忙し。

疲れることは何にもしていないのに、山でも登ったかのような疲労感と達成感がある。