きみのへたっぴな溺愛



507号室の前。

望月と書かれた表札を前に、吸ってー、吐いてー、深呼吸。

右手はインターホンの前に。

左手にはビニール袋。

中にはプリンがふたつ。それから、りんご味とぶどう味のゼリーとスポーツドリンク。

…お見舞いと言ったら、こんな感じだと思うものを選んだ。

準備よし。心の準備も…よし。


ピンポーン

その音がやたらと耳に残る。


『はーい』

すぐに遥斗くんの声がした。


「あ、遥斗くん…?星野です。えっと、お見舞いに…」

『え?あ、ちょっと待って…』


ドキドキドキ。遥斗くんが顔を出すと思うと、胸の奥が素早い反応を示す。

声はいつもと同じように聞こえたけど、大丈夫かな?

そう思いながら待っていれば、ガチャリとドアが開かれる。


「星野さん…」
「あっ、遥斗くん…」


私たちの声が重なった。

出てきた遥斗くんは半袖のTシャツに黒いスウェットパンツを着ている。

顔はほんのり赤い気がするけど、見た感じ…。


「…元気?」

「うん。星野さん、お見舞い…って言ったよね?」


「うん」と頷けば、遥斗くんは可笑しそうに笑った。