どうしよう、なんて送ろうかな…。


「衣織ちゃーん」


悩んでいたら、名前を呼ばれた。

今日も元気いっぱいな夏生くんがやって来る。



「考えごと?眉間にすごいシワ寄ってたよ?」

「あ、うん…。実は昨日、遥斗くん私に傘を貸してくれて。だから風邪引いちゃったのかな…って」

「それで申し訳ないなーって思ったんだ?」


「うん」と頷いた。


「じゃあ、丁度いいかも」


ちょうどいい…ってなにが?
首を傾げれば、夏生くんはニコッと笑う。


「衣織ちゃんに遥斗のお見舞いお願いしたいなあって思って。同じマンションだって聞いたし」

「あ、そう…だけど」

「今あいつの両親いないみたいで。家にひとりでさびしーと思うんだよね」

「…うん」


前に、遥斗くんが、両親は出張に行っていると言っていたのを思い出した。

風邪を引いている中でひとりは絶対にさびしいと思う。 

…でも。


「行っていいのかな…?」


お邪魔になったり、気を遣わせてしまいそうで、簡単にお見舞いに行くことはできない。

それなのに夏生くんは「いいよいいよー」って呑気に返してくる。