「今日は望月が欠席かー」


教室を見渡した田中先生がそう言う。

「「えーっ」」とみんなが残念な声を上げた。

もちろん、私もそのうちのひとり。

だけど、それ以上に後悔の波が押し寄せる。


…やっぱり、風邪を引いてしまったのかな。

昨日の出来事を浮かべては、はぁ…とため息をつきたくなる。

せめて、相合傘で帰れてたら…と思っても後の祭り。

遥斗くんは一本の傘を私に譲ってくれたんだから、そんなことを考えるのすら失礼だ。


朝礼が終わったのを確認して、スクバに仕舞っていたスマホを取り出した。

メッセージアプリを開けば、遥斗くんの名前が上部分に表示される。

そのまま、指でタップして。


〈傘ありがとう!〉


昨日、悩んだ末に、一言だけ送信したメッセージが画面にあらわれる。


〈いいえー!星野さん、濡れてない?風邪ひかないでね〉 

〈本当にありがとう!遥斗くんこそ、風邪ひかないでね(>_<)〉

〈俺は大丈夫!気にしないでー〉


…続いたやり取りを見て、またため息。

終いには、逆に気遣われてしまっている。