きみのへたっぴな溺愛

これは紛れもなく遥斗くんの腕で、背中にぬくもりを感じるから…。

後ろから抱きしめられるように…。

違う。抱きしめられながら座っている。

頭がそれを理解するとバクバクと鼓動が活発になり、体温が急に上昇した。



「…大丈夫?」

「っ…」



ピクッと。耳元で聞こえた声に、体が否応なしに反応してしまう。


「う、うん…ごめんね、ありがとう…」


震える声で返事をして、ゆっくりと振り向いた。

いつもよりもグンと近い距離で視線が交わる。

綺麗な目から逸らせないで、数秒。

何か言おうにも、言葉が出てこない。

えっと…。必死に頭を動かそうとした時、ガラガラと再び大きな音がした。


「星野、どうだーって…キャッ」


その言葉とともに登場したのは田中先生。

両手を顔の前にやっているけど、指の隙間から私たちを見ている。


「「え、えっと…」」


固まったままの私と遥斗くん。