きみのへたっぴな溺愛

「あっ、上の方俺取るよ?」


私が届いていないことに気付いた遥斗くんが声をかけてくれる。


「ありがとう。でも大丈夫だよ」


近くの足元に置いてある踏み台を持ってくる。

銀色の小さなそれにのぼって、手を伸ばす。

もうちょっと…。

足のつま先に力を入れて、指先でグイッと本を引っ張り出す。


「あっ…」

と思った瞬間、後ろによろめく。

踏み台の上に着地したと思ったけど、そうはいかず。

スローモーションのように後ろに倒れるのがわかった。


「ほしのさんっ…」


その声を聞きながらぎゅっと目を閉じる。

ドスッ。バタバタバタって派手な音がした。

…それから暫くして、おそるおそる目を開ける。


「あっぶなー」


ふぅ、と。首に息が掛かるのを感じて、ドキンと胸が波打つ。

瞬きを数回繰り返して、今の状況を確認する。

私は尻もちをついていて。

腕まくりされたワイシャツから覗く手が首の下らへんと、腰に回されている。