きみのへたっぴな溺愛

へへって照れ笑いを浮かべる姿にキュンとしながら、「少年漫画?」と聞いてみる。


「うん、そう。あっ、でもこの間少女漫画読んだ。夏生おすすめの」

「夏生くん少女漫画読むんだ!」


…そして、遥斗くんも。想像したら可愛いく思えて、表情が緩んでしまう。


「ね、夏生、意外とかわいーとこあるよね」


そう言って、遥斗くんは楽しそうな笑みを浮かべる。

遥斗くんと夏生くんの仲の良さが伺えて、微笑ましさ8割。…羨ましさ、2割。

こうして近くにいるのに、私はずっと想いを告げないでいるのかな…。

そんな考えが自然と湧いてきた。


…だけど、今ここで告白する勇気も度胸もない…。

そうやってずっと言い訳ばかりするの…?

って考え始めると、余計に心臓がドキドキと音を鳴らす。


…とりあえず、作業しないと…。って、無理矢理考えるのをやめて、1番上の本に手を伸ばす。


『夏目漱石全集』 

そう書かれた本の背表紙を指先がなぞった。

思いっきり踵を上げる。