「いいのか…?」

「はい」


今日の放課後は用事もないし、掃除くらいならどうってことない。


「助かる!実は明日から点検とか入るから、どうしても今日、本の整理したくて」


パチンと。田中先生は顔の前で手を合わせて、頭を下げる。

「わかりました」と頷けば、ヘラッとした笑顔と「ありがとう」の言葉が返ってきた。




「雨止まないねー」

「梅雨だからね」


お昼休み。

お弁当を食べ終えた未緒とまりやが窓の外を見る。


今日から6月。テレビの中で、お天気お姉さんが「例年よりも早い梅雨入り」だと言っていた。


暗い空を見ていると、憂鬱な気分に誘われる。

…それもそうだ。

1時間目にあった席替えでは、またしても遥斗くんと遠くなってしまった。

私は窓際の1番後ろ。
遥斗くんは廊下側の1番後ろ。

縦一直線が横一直線になっただけで、少しも近くの席になれなかった。

これだと、授業中に遥斗くんを見ることも叶わない。

顔を真横に向けるわけにはいかないし…って、考えを振り払うようにブンブンと首を横にふる。