すぐに信号は赤から青へと変わり自転車が走り出す。

やっぱり自転車だとはやい。

流れる景色を見ていたら、目的地に近づいているとイヤでも気づいてしまう。

空を見上げれば薄らと月が出ていた。

朝の月はなんとなく好きだ。



「げ。岡野せんせー立ってる」


もうすぐ高校、という場所で自転車が止まる。


「えっ…」


岡野先生。確かにそう聞こえた。

体育担当の彼女は生活指導の先生でもあって…すごく厳しいことで有名だ。

ふたり乗りを見られたら間違いなく怒られる。


「星野さん、降りれる?」

「うん。ありがとう」


私だけ降りる。と思ったけど、遥斗くんもすぐに降りて自転車を押す形になった。



「こっからは歩いて行こ」

「…いいの?」

「もちろん。岡野せんせーって怖いよな」

「そう、だね…」


高校の校則自体はそこまで厳しくない。
むしろゆるい方だと思う。

けれど、岡野先生はスカートの長さとかをよく注意すると噂に聞いた。