きみのへたっぴな溺愛

「未緒」
「未緒ちゃん」


私とまりやの声が重なる。 

登校してきた未緒は私たちを交互に見て「珍しいね?」と一言呟いた。

思えば未緒とまりやが話してるのも、あまり見たことがないかもしれない。



「あのね、今日の放課後プール掃除になっちゃって」

「プール掃除?ふたりとも?」


私の言葉に未緒は首を傾げる。


「うん。岡野先生に怒られちゃって…」

「衣織が?」

「スカート折ってきたらバレちゃった」

「そうなんだ。ドンマイ」


笑った未緒が私からまりやに視線を移す。


「まりや…ちゃんも?」

「うん。あたしはスカートもメイクも?」

「あー……なるほど」

「未緒ちゃんは?ナチュラルメイクだから怒られてない?」


ぐいっと近づいたまりやに、未緒はニヤリと頷いた。


「その通り。ギリギリのラインを見計らってるから」

「すごいっ!ぜひ教えて」

「任せて」


手を取り合うふたりに、「わ、私にも…お願いします」って挙手をする。


「じゃあ、今度3人で遊びにでも行こっか」


落ち込んでいた気持ちはいつの間にか消えていって、ふたりのおかげで再び元気になった。