きみのへたっぴな溺愛

「実はね、さっき岡野先生に怒られちゃって…」

「えーなに、リップ?」

「うん。あとスカート折ってたのもバレて。今日の放課後プール掃除って言われちゃった」

「プール掃除?…あっ、」


なぜか目を丸くしたまりやは口に手を当てる。


「それ、あたしも言われてる…」

「えっ、うそ」

「本当。うわー忘れてた…。思い出させてくれてありがと」

「う、うん…」


まりやは「あぶなー」って笑ってるけど、それってつまり…。


「怒られたことあるの?」

「うん。この前岡野先生に捕まったよ。まあ、こんだけガッツリメイクしてればね。スカートもガンガン折ってるし」

「そっか……」

「もしかして、あたし昨日余計なこと言った?」

「えっ?ぜんぜんっ」


首を横に振る。

たしかに昨日、メイクの話で盛り上がって、「衣織もメイクしてみたら?」と言われたけど。

可愛くなりたいと思ったのは私の意志だから、それとこれとは別問題だ。


「…そう?」

「うん。それにプール掃除、まりやがいるなら良いかも」

「あたしも。頑張ろ」


「うん」と頷いた時、「おはよー」と声が掛かった。