「星野さん?」

「っ!」


声にならない声とともに肩が上がった。

浮かれ足で出たお店の前。


私の名前を呼んだのは、いつも優しい響きを纏う、少し低い声。


「遥斗くん…」

「今帰り?」

「うん」


完全に足が止まった私の元へ彼が歩いてくる。

遥斗くんは見慣れた制服姿じゃなくて、半袖のTシャツに黒いジャージを着ていた。

そんなラフな格好にもときめくのは必至。

頬が緩まないように平静を装っていたら、自然と並ぶ形になる。


「コンビニでなに買ったの?」


と。彼の手にある白いビニール袋を見ながら、会話の糸口を探すより先に聞いていた。


「のり弁とお菓子」

「のり弁!ここの美味しいよね」

「うまいよね。星野さんも食べるんだ?」

「うん。たまに」


白身魚にちくわの天ぷら。さらには唐揚げも入ってるそれはボリュームがいっぱい。

だから、ガッツリ食べたい気分の時は買いに来る。

最近は食べてなかったから、今度食べようかなって考えたら、お腹が空いてきた。