エレベーターを降りたところで、時間がないことに気付いた。


…そうだ。家を出た時はすでに8時25分で、高校までは徒歩15分くらい。

8時40分に本鈴が鳴る。ということは、走った方がいい…よね?

…それよりも、遥斗くんと一緒に行くってこと…?



「?星野さん?」

「あ、えと…」



考えるあまりエントランスで突っ立ってしまった。

遥斗くんに覗き込まれる。


「そういえば、星野さんって自転車?」

「う、ううん。歩き…。遥斗くんは?」

「あー、俺自転車で行こうかなって思ってたんだけど…一緒に行く?」

「え?」


って首を傾げるよりはやく手を掴まれた。


「へ…」

「一緒に行こ」

「えっ…」

「どうせ行く場所一緒だし」

「あ、ありがとう」


引っ張られるまま駐輪場に着けば、遥斗くんがシルバーのシンプルな自転車を取り出した。


「乗って」と促される。

ふたり乗り…?本当に?
でも断るのも悪いし…。
ううん、断りたくないし…。

葛藤しながらも、自転車に跨った遥斗くんにつづく。