「あの…もうちょっとここにいてもいい?」

「え?」

「まりや…とお話ししてみたいなと思って…」



思い切って言ってみた。

迷惑だったかな…?と不安になるより先に、手を握られる。

まりやがガタンと音をたてて立ち上がるから、私の視線は下から上に移動する。



「嬉しい!実はあたしも話してみたいと思ってた」

「ほんと?」

「ほんとほんと!ここ座りなよー」


「えっ…」と固まってしまったのは、“ここ”が遥斗くんの席だから。

だけど、流されるようにそこに腰を下ろす。

ドキドキ。ただ席に座るだけなのに、胸が高鳴った。

いつもここに座る彼が頭に浮かび、嬉しいのやら、恥ずかしいのやら。


「ねぇ、もしかして…」


ずいっとまりやの顔がドアップにうつり、反射的に少し仰け反った。


「衣織って、遥斗くんが好きなの?」

「えっ…あ、ど…」

「……」


カーッと熱くなって咄嗟に俯いた。

これだと肯定してるようなものだ。

だけど、赤くなる頬は止められない。

恐る恐る顔を上げれば、まりやは目を丸くしていた。