きみのへたっぴな溺愛

基本的には早寝早起きを心がけている。

子どもの頃に習慣づけたのが、体に染み付いてるのかもしれない。

なんて考えていたら、ふと夏生くんの顔が近づいてきた。


「まつ毛…」

「え?」


ここ、と夏生くんは自分の目の下に指を当てる。

それに習って私の指も動かせば、ハラリと1本のまつ毛が落ちた。


「ありがとう」

「いーえー…あ、」


視線を動かして夏生くんは固まる。

私も顔を動かしてみたら、なんとびっくり。

遥斗くんがこちらを見ていた。


『ち・か・い』


夏生くんに向けて何かを言っている。


「あいつ本当バカだよねー」


アッハッハって隣にいる彼は大笑い。


『な・つ・き・の・バ・ア・カ』


今も口をパクパクさせる遥斗くん。


「なんて言ってるかわかるの?」

「うん。大体は」

「すごい」


私は全然わからなかった。

夏生くんはヒラヒラと手を振る。

遥斗くんはそれに返すことはせずに、やがてぷいと前を向いてしまった。

彼らの仲の良さを実感して、私もつい笑った。