「あ、鍵…」

「え、あ、本当だ…」


音もなく落ちたそれを拾う。

とりあえずガチャリと鍵を閉めた。
そこでハッとする。



「学校…急がないと」

「そうだ!行こっ」



この状況に驚きながらも足を動かす。

運良くエレベーターがすぐにきて、遥斗くんと乗り込んだ。


「えっと…もしかしなくても…星野さんってこのマンションに住んでる…よね?」

「うん。508号室…」

「俺、507…」

「となり…」

「隣だ…」


目が合った彼はハハって笑い出す。


「すごい偶然」

「うん…」



正直、まだ信じられない。


「実は俺、一昨日引っ越してきたんだよね」

「えっ、そうなんだ!」


なるほど、と納得する。

だって、こうして会うのは初めてで。
同じマンションに、それも隣に住んでいたなんて。


「まさか隣が星野さんだったとは…」

「うん。私もびっくり」


驚き過ぎて、パニック。

引っ越してきたんだね。とか、お隣さんなんだ。とか。

一つ一つを頭の中で整理していたら、静かな音を立ててドアが開く。