「本当ねー、羨ましい」

「そう言う彩香は気になってる人いるけどね」

「えー誰?」


未緒が首を傾げれば、すぐに彩香がニコリと笑って。


「サッカー部の佐藤先輩」


と呟いた。


さとうせんぱい…。

ギクリ、として美緒を見る。

斎藤先輩と響きは似てるけど違う人…だよね?

未緒も一瞬固まったのがわかった。

けど、すぐに「キャプテンだっけ?」と会話を続ける。

なんていう冷静さ。

こういう時、頼りない自分が情けなくなる。



「そうそう。3年生なんだけど、まあ良い人で。爽やかで優しい!」

「えー、いいね。年上ってなんかいいよね」

「わかる。ってかこの高校イケメン多いよね」

「そうそれ!まず遥斗くんでしょ。それから夏生くんも。あ、あと、D組の水瀬くんもかっこよくない?」



真由が指折りしながら言う。

自然と話の流れが変わってホッとした。

遥斗くんの名前に一瞬ドキってしつつ、相槌を打つ。



「真由彼氏いんじゃん」

「それとこれとは別だから。目の保養みたいな?」

「まーね」



「どういうのがタイプ?」と話は盛り上がっていき。

タイミングを見計らって「お手洗い行ってくるね」と部屋を出た。