…とにかく、彼は人気者。

わかってはいたけど、改めてそれを実感すると、なんか…。


「「「キャーーーッ」」」

「「「遥斗くーーん」」」


鳴り止まない黄色い声は、まるでアイドルのコンサートみたいだ。

ボールを受け取った彼は、ドン…、ドンとドリブルをする。

相手の先輩が邪魔をして、思うように進まないのが見て取れた。

だけど、コート内を見渡す目は真剣そのもの。
彼の額を流れる汗がキラリと輝く。
 

運動は苦手と言っていたけど、バスケは好きなのが伝わってくる。

遥斗くん以外にも選手はいて、何ならボールを持っているのは他の人なのに。

吸い込まれるように、遥斗くんしか見えなくなった。

目が彼を自然と追ってしまう。


…けれど、それは私だけじゃない。

多くの女の子が遥斗くんに視線を送っている。

その中には、たぶん、私と同じように恋をしてる子もいるだろう。

…おかしいな。目頭がじわりと熱くなる。

なぜだか急に泣きたくなった。