バチっと。目が合った…と思う。

ニッと口角を上げた彼が動き出す。

すぐに逸らされてしまったから確証はないけど、絶対に目が合った。

ドクンドクンって心臓が跳ねる。

ほんの少し苦しくて、走り終わった後のような感覚におそわれる。


「かっこいい…」「遥斗くんやばっ」
「さっき写真撮ってもらおうと思ったら、遥斗くん見つからなかったんだけど」「なんかC組の男子たちずっと練習してたらしいよ?」「めっちゃ気合い入ってんね」
「はあ…本当目の保養」



周りの子たちが口を揃えて「遥斗くん」と言うのが耳に入る。


「さすが王子様だねー」


未緒が私に顔を寄せて呟く。

無意識のうちに頷いた。

“王子様”
それは十中八九、遥斗くんを指している。

芸能人さながらのルックスにスタイル。
さらには優しく、性格も良いのだから頷ける。

女の子たちの間では“みんなの遥斗くん”とも呼ばれているらしい。

だからか告白する人はほとんどいないという噂だけど、実際はどうなんだろう。