未緒と先輩が付き合い出したのは1週間前くらい。

同じことを思ったのか「あーあ、最短記録だわ」って本人は笑っている。


「ま、でもさ、先輩引き止めたりとかもなくて。『わかった』ってあっさり了承。だから、次の恋に期待することにした」

「…うん。そっか」


彼女が決めたことなら、私は何も言わない。

でも。


「私は未緒がすきだよ」

「えっ、なに…ありがとう」


ふふってお互いに笑う。
未緒にはやっぱり笑顔が似合うもんね。


「あっ」

「ん?」


そういえば、隼人が未緒の連絡先を知りたがっていたことをパッと思い出す。

…忘れていた。けど、まあ、いっか。
自分で聞くって言っていたし。


「ううん、なんでもない」

「そ?あ、もう始まりそうだね」


未緒が指差した方、下のコートを見下ろす。

最前列を死守したからよく見える。

そこには赤いゼッケンを着けた遥斗くん。
と、クラスメイトの男の子たち。


青いゼッケンを着けているのは、2年F組の先輩たちで初戦の相手。

「センパイってそれだけで怖いよな」って夏生くんが言っていたけど、たしかにちょっと強面な人が多いような気がする。