「あのさっ、写真…撮らない?」

「撮る…っ」


反射的に大きく頷いてしまった。

恥ずかしさがじわじわとこみ上げる。


「よかった…」


遥斗くんはホッとしたように呟いて、ジャージのポッケからスマホを取り出す。

…本当に写真を撮るんだ。

それだけのことなのに、ドクドクと脈が速くなる。


未緒とか女の子同士ではよく一緒に撮るけど、遥斗くんと撮るのは初めてで。

うまく笑えないかも。
今まで写真ってどうやって撮ってたっけ?


「はい」


考えているうちに、遥斗くんがそばに立つ。

身長差をなくすように屈んでくれる。


スマホの画面に映る彼と私。

身につけている黄色いハチマキが風に揺れた。

えがお、えがお…。
必死に平静を装って、口角を上げる。


遥斗くんもカメラアプリを利用するんだなあ。
って思ったり。
距離近いなあ。とか思っていれば。


「はい…。ありがと」


一瞬で音もなく写真が撮れた。


「今日、頑張ろうね」


遥斗くんはすぐにスマホを閉まって笑う。

背の高い彼を自然と見上げた。


…前言撤回。幸せをもらうだけじゃなくて、私も遥斗くんの力になりたい。そう思う。