「初めまして…」となんとか口を動かせば、奥にいた遥斗くんが目の前に来る。


「ごめん…。俺、親が帰ってくる日勘違いしてたみたいで…。父さんと母さん…です」

「そうそう。ごめんねー、お邪魔して。遥斗の母の絵美子です」

「初めまして、父の隆史です。遥斗がお世話になっています」


立て続けにされた挨拶にコクコクと頷いて、絵美子さんと隆史さんの目を見る。


「は、初めまして…。星野衣織…です」


生まれて何十回としてきた挨拶だけど、今が１番緊張してしまい、出てきた声は小さかった。

それでもちゃんと聞こえたみたいで「衣織ちゃんね」と絵美子さんが笑う。


「遥斗にこんな可愛い彼女がいたなんて知らなかったわ。いつから付き合ってるの？それより遥斗で大丈夫？」


絵美子さんは私に１歩近付きそう告げた。　

「え、えっと…」と何から言えばいいのか分からず言葉に詰まってしまう。


遥斗くんが「母さんっ」と焦ったように声を上げると「で、ふたりで何してたの？」と新たな質問が飛んでくる。

それを聞いて自分がここに来た目的を思い出した。


「…夏休みの宿題」


遥斗くんが呟いた言葉に頷く。