パチパチと瞬きを数回繰り返す。

遥斗くんと鼻が触れそうなくらい近くにいるから、彼の表情はよく見えないけど、固まっていることだけはわかる。


「…」

「…」


ピーンポーンともう一度インターホンの音が鳴った。


「ごめっ…出てくる…」


のそりと体を動かした遥斗くんは、立ち上がって歩いていく。

その背中を目で追いつつ、私も体を起こした。

ドクドクドク…と静かな部屋に心臓の音が響いている。


「ただいまー」
「げ」
「げ、ってなによ、げって」


玄関の方で声がしたことにハッとして、ど、どうしよう…と頭が回り出した。

お茶を一口飲んで落ち着かせる。

それから熱くて赤いであろう頬を冷ますように手をパタパタとさせていたら…。

「こんにちはーっ」と。

女の人の明るい声が耳に届く。


「こ、こんにちは…」


ガバッと立ち上がりペコッとお辞儀をする。


「キャーッ。彼女?彼女さんよね?初めまして!」


艶のある黒髪をなびかせてすごく綺麗な女の人が近付いてくる。


「ちょっ…母さん…っ」


その後ろから遥斗くんと眼鏡をかけた男の人も入ってきた。

遥斗くんのご両親…心の準備が……と困惑して棒立ちになってしまう。