「…」

「…」


近距離で視線が交わりながら、時間だけが過ぎていく。


「衣織ちゃん…」

「………んっ…」


塞がれた唇からわずかに声がもれてしまう。

…だけど、それを気にしていられる余裕はなく、いつの間にか絡みとられた左手に力が入る。


「っ…」


目を瞑っていれば、与えられる熱に全身があつくなっていく。


ぽふっと背中に感じた柔らかさに、ゆっくり瞼を開けた。

覆い被さるような遥斗くんを見て、あ、ソファーに押し倒されているのだとわかる。


頭の後ろには遥斗くんの左手が優しく添えられていた。


「衣織ちゃん…」


名前を呼ぶその声が少し掠れていて、胸の奥が疼く。

壊れそうな心臓に、もう何も考えらない。

瞳、きれい…と真上にある顔をただただ見つめる。

遥斗くんが再び近づいてきて、もはや条件反射のように目を閉じた。


「…」

「…」


…だけど、予想していたことは起こらず。


代わりにピンポーンという音が聞こえた。