「ジュンさんってさ…」

「う、うん…」


至近距離と上目遣いのダブルパンチに、内心ドキドキが加速するのを感じながら相槌を打つ。

少しの間を置いた後、「男の人?」と一言。

低い声が聞こえた。


「女の人…だよ?」

「……そっか…なんだ、よかった…」


遥斗くんが安堵したように息をはいたのを見て、首を傾げる。


「よかった…?」

「うん。だって…」


ふいっと視線を逸らされてしまった。


「男の人だと…妬けるし…」

「やけるって…やきもち?」

「う、うん。そう…」


顔を隠すように遥斗くんが背を向ける。


「衣織ちゃんの髪の毛を触るのも妬けるし…美容師ってカッコいいし…」


小さな声で続けられたセリフに胸が高鳴った。

遥斗くんも少しは私と同じ気持ち…だよね?

彼の顔がよく見えないのが焦れったくて、腕にそっと手を乗せる。


「うれしい…」


前から覗き込むように言ったら、顔を動かした遥斗くんと目が合った。

…と思えばすぐに距離がなくなり、自分の唇に彼のそれがそっと触れる。