「やー！彼氏！衣織ちゃんの彼氏」

「ジュ、ジュンさん…。そんなに連呼されちゃうと恥ずかしい…です」

「あら、ヤダ。ごめんなさい！何歳になってもこの手の話題は好きなもんで」


ジュンさんがふふっと頬を緩ませてから「そうねぇ…」と、今度は考えるように指を顎に当てる。


「衣織ちゃんの彼氏ってどんな人？」


てっきり、髪型についての相談に入ると思い、聞かれた質問に目を丸くした。


「…優しいひと、です…」


彼氏…遥斗くんを思い浮かべれば、口が勝手に動く。


「そうかそうか〜。じゃあ、あんまり派手なのは好まないかな？外ハネになるように切ってみる？イマイチ？」

「外ハネ…」


になった自分をイメージしようと、前にある鏡をチラッと見る。

自分の髪はどちらかと言うと無造作にクルッとなっている。

ストレートアイロンを当ててもなかなか治らないから放っておくことが多い。


美容院に来る度、ヘアカタログを見たりしてイメチェンを考えるけどしたことはない。

うーん…と考え込みそうなとき、ふいに。


『衣織ちゃんの髪ふわふわしてて可愛い』
　
以前、遥斗くんに言われた言葉を思い出した。