「衣織ちゃん、こんにちは。久しぶりじゃない?よろしくお願いします」


見ていた雑誌から顔を上げると、ニコッと笑ったジュンさんがいた。

美容院のここでしか顔を合わせない彼女とは、言葉通り久しぶりだ。

いつもお世話になっているから、ジュンさんの笑顔を見ると自然と気持ちが和む。


「ジュンさんお久しぶりです。お願いします」

「はいはーい。今日はカットだっけ?どんな感じにする?いつも通り?」

「カットなんですけど…あの、」


一旦言葉を区切る。

言おうか迷ってしまうけど、思い切って口を開く。


「えっと…男の子に、可愛いって思われる髪型…ってどんなのがありますか…?」


私の小さな声を聞いたジュンさんは目をパチパチとさせた。

それから右手を口の前に当てて。


「なになに、好きな子?恋してるの?」


と前のめりで聞いてくる。

あたふたしながら「彼氏…がいて、可愛くなりたいなぁ…なんて思って…」と答えた。