「ポップコーンは?食べる?」

「…半分こ…したい」

「いいよ。そうしよっか。味どれがいい?」

「塩が…いいな」

「おっ、俺も塩派」


「買ってくるね」とレジに向かう遥斗くんに「ありがとう」と返して、端っこの方で待つ。

…すごく彼に甘えてしまってる気がして、胸の奥がくすぐったい。

楽しいな。

そう思いながら周りを見渡す。

映画館の中は子どもから大人までたくさんの人で溢れかえっていた。


中には手を繋いだり腕を組んだりと、恋人同士と思われる人たちもいる。
 
…遥斗くんと私もあんな感じ…だと思うと、気恥ずかしくて、そっと見ていたカップルから視線を外す。


「お待たせ。行こっか」

「ありがとう」


ポップコーンを持った遥斗くんと席に着く。

真ん中の後ろ辺りが空いていてラッキーだった。

「楽しみだね」と薄暗い空間に、にやりと遥斗くんの笑みが浮かぶ。


「うん。ちょっとドキドキしちゃうかも」

「ね。あ、ポップコーンうまい。衣織ちゃんもどーぞ」

「ありがとう。いただきます」


ポップコーンをもぐもぐして、買ったお茶を飲んで、遥斗くんと話していたら、やがて辺りが真っ暗になる。