「ねぇ、遥斗くん…。この電車反対方向じゃない…?」

「えっ、うそ…」


ふたりでドアの上部分、小さな液晶画面に目をやる。

どう見ても目的の駅から離れているとわかった。


「ほんとだ…次で降りよっか」


それに頷いて、開いたドアから一度ホームに降りる。


「3番線と4番線間違えてたかな…」

「だね。全然気付かなかったわ」


お互いに笑みをもらし、今度は予定していた電車にきちんと乗り込む。

無事に目的だった駅で降り、そのまま目当ての場所に到着。

…したはずなのに。


“臨時閉館”の文字が目に飛び込んでくる。

調べた時は開館予定になっていた…と思う。

ふたりとも「え…」と動揺を隠さずにポカンと固まってしまった。


目の前にある建物は、水族館。

涼しそうだから。という理由だけで選んだけど、水族館に来るのは小学生以来でもあって、実は期待に満ちていた。


「残念…」

「…きっと魚たち、衣織ちゃんに会うのが恥ずかしくて隠れちゃったね」


隣を見ると優しく笑う遥斗くんと目が合う。 

「うん」と頷くものの、それを言うなら。