「おはようっ。早いね」

「衣織ちゃんこそ」

「私は…楽しみで」

「俺も。だからはやく家出てきちゃった」


「ん」と差し出された左手に自分の右手を絡める。

まだ太陽の下に出ていなのに、全身があつい。


「行こっか」とゆっくり歩き出して、横にいる彼をチラリと見た。

遥斗くんは白いTシャツに黒のスキニーパンツという至ってシンプルな格好。

それでも絵になるから、すごい。

なんて思いながら綺麗な横顔を見ていたら、こちらを向いた彼と目が合う。

ドキッとして「えっと…」と口が不自然に開く。


「…どうかした?」

「…楽しいなあ…と思って」


思うままに言ったら、ははっと可笑しそうに笑われてしまった。


「まだ何もしてないのにね?」

「う、うん…」

「俺もすでに楽しいよ」

「ほんと?」

「ほんとほんと」


…それならよかった。

今日は絶対いい日になる。そう思って、ウキウキしながら駅まで行き電車に乗った。

…のだけれど。