ここか?こっちの方がいいか?

右腕をあちこちと動かせて、うまく顔が収まるようにする。

結局、近すぎず遠すぎずの位置を見つけ出して「はい」と写真を撮る。


「ありがとう」


衣織ちゃんは受け取ったスマホを大事そうに見た。


「あっ、ブレてないね」

「ほんと?よかった」


スマホ画面に映る俺たちは確かにブレていなかった。

だけど、それを見ると気恥ずかしさがうまれて、視線を遠くの方に向ける。

そこには、美味しそうにお肉やら野菜やらを食べ始めている奴らがいた。

…そうだ、バーベキュー中だった。


「そろそろ戻ろっか」

「あっ、うん」
 

頷いた衣織ちゃんは、なぜか動く気配がない。


「衣織ちゃん?」

「遥斗くん…。あの、ね…」

「うん?」


俺の手首を小さな手が掴む。

咄嗟のことにビクッと肩が反応してしまった。



「今日の夜…ちょっとだけ…部屋抜け出せない?」

「え……?」