きみのへたっぴな溺愛

「泣かないで…あのね」

「っ…うん…」


「多分、だけど…衣織ちゃん、騙されてる…」

「だまさ………え…?」


ツーっと一滴の涙が頬の上を滑り落ちる。

それを左手の中指ですくいながら、「よく聞いてね」と口を動かす。


「まず、俺は告白されてないよ」

「…え?」


あ、泣きやんだ…?

パッチリとした目が射抜くように俺を見た。


「俺は告白されてないから。えっと…」

「…じゃあ…どうして…?」


川島があんなことを言ったかって…?

それは多分。


「衣織ちゃんに意地悪したかっただけだと思う…」

「いじわる…?」


こてんと首を傾げる衣織ちゃんに、頷く。


「ほら…男子って、好きな子に意地悪したくなるじゃん?そういう感じだと思う……」

「そういう…もの?」

「…うん」


悲しいけど、それが男の(さが)なのだろう。

高校生になっても、なかなか変わらないみたいだ。