きみのへたっぴな溺愛

パチパチと目を瞬かせて、衣織ちゃんを見る。

彼女の目にはうっすらと涙が溜まっていく。

かわいい……ではなくて。


「俺はされてないけど…?」


首を傾げる。

告白されたのは、衣織ちゃん、なんだよな…?


「…うそ。川島くん言ってた…し……」

「…川島くんってだれ?」

「川島くん…は…」


そこで彼女はハッとしたように目を開いて、口を閉じてしまった。

うるうるとした目をキョロキョロと泳がせる姿にドクンと胸の奥が騒ぐ。


『ちょっと意地悪したくない?』
…なんて、悪魔の囁きが聞こえた。



「…じゃあ、わかった。その川島。俺が告白されてたって、いつ言ってたの?」

「き、昨日…」

「昨日喋ったんだ?」


視線を下に落としていた衣織ちゃんは、バッと勢いよく俺を見た。



「こ、告白され、て……」

「…されて?」

「こ、断ったよ……っ」

「っ…」


ポタリと彼女の目から涙が溢れた。


「ご、ごめん…」


咄嗟に左手を伸ばして、涙を拭う。