きみのへたっぴな溺愛

「あっ、あの…遥斗くん」

「うん?」


クルッと衣織ちゃんが俺を見上げた。

上目遣いの再来にドッキーンとしたけど、ジャーと流れ続ける水の音がそれを隠してくれる。


「えっ…と」


もじもじ。そんな風に少し頬を赤らめる様子に、頭がクラクラし出す。

すぅ、と深呼吸をひとつした。

平常心、平常心。


…ここは、冷静に平静を保って…理性を…。

…ダメだ。セイセイ唱えすぎて、訳が分からなくなってきた。

何考えてたんだっけ…?
とにかく、なにかsayしないと…。


「衣織ちゃん……告白され…た……(?)」


語尾が段々と小さくなったけど、言葉が出てくる。

よりにもよってその内容…という気がするけど、さっきからずっと、頭にひっかかっていた。


「え………」


固まった衣織ちゃんは一度俯いて、ゆっくりと顔を上げた。

大きな瞳と視線が重なる。


「やっぱり…ほんとう?」

「…うん?」


「本当?」と聞かれても、本当かどうかを知っているのは、衣織ちゃんのはずだ。

真っ直ぐ見つめていれば、彼女の口が小さく動いた。


「遥斗くん、告白された…んだよね?」

「………え?」